外国人社員が過労・ハラスメントを訴えてきたときの会社の対応【2026年版】
中小企業の経営者の皆さま、こんにちは。
人権意識の高まりやSNSの普及により、外国人社員が「過重労働」や「パワーハラスメント」に対して声を上げるケースが増えています。「外国人だから多少の無理はきくだろう」「日本の商習慣だから理解してくれるはずだ」といった認識は、今や企業の存続を揺るがす重大な経営リスクとなっています。
今回は、外国人社員から過労やハラスメントの訴えがあった際に、会社が取るべき正しい対応を解説します。
1. まず会社がやるべきこと:事実確認と記録の保全
訴えがあった際、最も避けるべきは「無視」や「感情的な反論」です。
外国人が理解できる言語での対応:特定技能制度の支援計画でも義務付けられている通り、苦情や相談に対しては「外国人が十分に理解することができる言語」で対応しなければなりません。「日本語で話せ」と強要すること自体がハラスメントとみなされる恐れがあります。必要に応じて通訳を介し、本人が何を・いつ・誰から・どのように受けたと主張しているのかを正確にヒアリングしてください。
客観的な証拠データの精査:勤怠データ、賃金台帳、メールやチャットの履歴を確認します。
- 過労の訴えの場合:労働基準法が定める36協定の範囲内か、法定休日が確保されているかを再点検します。
- ハラスメントの訴えの場合:現場の管理者や同僚へのヒアリングを行い、事実関係を多角的に確認します。
これらの記録は、将来的な入管の調査(報告徴収)への備えにもなります。
2. 労働基準監督署への対応:申告と調査への備え
外国人を雇用する場合も、日本人と同様に労働基準法や労働安全衛生法等の労働関係法令が全面的に適用されます。
入管と労基署の連携:労基署の監督指導によって違反が認められた場合、入管へ情報が共有され、企業の受入れ適格性が審査されることがあります。労働問題は在留資格の手続きにも影響する点を意識しておくことが重要です。
残業代・賃金の適正管理:過重労働の訴えがあった場合、残業代が適切に計算・支払われているかが最初に確認されます。未払いや遅延がある場合は速やかに是正してください。賃金の不適切な管理は、労基署の指導対象となるだけでなく、在留資格の更新審査にも影響します。
3. 特定技能の場合の追加対応:支援計画と相談対応義務
「特定技能1号」の外国人を受け入れている場合、会社には法的な支援義務が課せられています。
相談・苦情への対応:職場生活や社会生活上の相談に対し、遅滞なく適切に応じ、必要な助言・指導を行うことが法律上の義務です。
定期的な面談(3か月に1回以上):支援責任者等は、外国人本人およびその上司と定期的に面談し、労働基準法違反等がないかを確認しなければなりません。
行政機関への通報義務:面談等で法令違反を把握した場合、会社は自ら行政機関へ通報する責任を負います。これを隠蔽したことが発覚した場合、重いペナルティが課されます。
4. 在留資格への影響:更新・取消しリスク
労働問題の不適切な処理は、外国人社員個人のビザだけでなく、会社の今後の受入れ体制に深刻なダメージを与えます。
在留資格の取消しリスク:過酷な労働環境により、外国人が本来の在留資格に応じた活動を適正に行えない状態が続けば、その社員の在留資格の取消しを招く可能性があります。
所属機関としての受入れ停止リスク:労働関係法令に関し、不正または著しく不当な行為(ハラスメント・賃金不払い・過重労働等)を行ったと認定された場合、企業は不適格な所属機関とみなされ、今後の外国人受入れに支障が生じる可能性があります。
5. 実務対応チェックリスト
- 相談内容を「本人が十分に理解できる言語」で文書化したか
- 勤怠データと賃金台帳を照合し、残業代が適切に支払われているか確認したか
- 現場責任者から「業務上の指導」と「ハラスメント」の境界について聞き取りを行ったか
- 特定技能の場合、直近の定期面談記録(3か月に1回以上)を確認したか
- 法令違反が確認された場合、行政機関への通報手続きを検討したか
- 是正措置の内容と実施日を記録として残したか
まとめ
外国人社員からの訴えは、一見するとトラブルのように思えますが、企業の管理体制を見直す機会でもあります。隠蔽や放置は在留資格の手続きにも影響します。事実を真摯に受け止め、迅速に是正する姿勢こそが、入管からの信頼につながり、優秀な人材の定着にもつながります。
「本人の主張と現場の認識が食い違っているが、どう整理すべきか?」「実地調査への対応を相談したい」そのような不安をお持ちの経営者様は、ぜひConnect行政書士事務所へご相談ください。

